昨年(2018年)から進められていた橿原市今井町の古民家プロジェクト。
3月の竣工をめざし、急ピッチで作業が進められていましたが、無事に改装工事を終えることができました。
ちなみに、最初に今井町の現場を訪問させていただいたときの様子は以下にまとめています。

今回の記事では、改修工事の最終盤の作業を請け負ってくださった塗装と建具、
それぞれの職人さんのインタビューをお届けします!
建具職人さんインタビュー
和室の引き戸は三つ組手の文様

建具とは、戸や扉、窓、襖、障子など、開閉機能をもった仕切りのことで、その製作・取付を行うのが建具職人さんの仕事です。
今回のプロジェクトは、和室の引き戸がもっともこだわったポイントだといいます。

その三つ組手に桜と麻の葉のデザインをあしらっています。
▲桜の文様
▲麻の文様
また、光の陰影がつくと、外側から見たときに文様が浮かび上がってきれいなんですよ。

腰板には屋久杉を使用

壁や障子などの下部に張った板のことを腰板といいます。
この腰板には屋久杉が使用されています。
(建具の他の部分は吉野檜、吉野杉を使用)

今回の物件は、内装の意匠に関しては一任いただいたので、「少しでもいい素材を」ということでこちらの屋久杉を採用させていただきました。
古民家ならではの微妙なズレをミリ単位で調整していく

今井町の古民家はっきりと100年以上前に建てられており、伝統的建造物保存の観点から、「使える建材は活かす」方針が取られています。
ただ、古い木材はゆがみやたわみなどが出てきていることが多く、そこに新しい建具を合わせるのが難しいといいます。

引き戸なので、当然無理なく開け閉めができるように調整するわけですが、戸が重すぎても、軽すぎてもいけません。
1年くらいは様子を見て、定期的なメンテナンスも必要かと思います。

ちなみに、こちらの引き戸は「削っては、嵌めて」の作業を約20回行い、微調整を繰り返したそうです。
こうした職人さんの細やかな作業が、古民家の再生を支えているわけですね。
耐力格子に施された遊び心

上の写真の左右にある格子状になっているのが、地震などによる水平荷重(横からの力)を軽減するために設けられた耐力格子です。
こちらの耐力格子は、今井景観支援センターが定める基準に基づき、設置が義務づけられています。


ちなみに、この耐力格子は奥行きが7.5cmあります。
通常、約3cmまでのものが建具職人の管轄で、それ以上大きいものは大工さんの仕事になるそうです。
自由度が高い分、持てる技術のすべてをぶつける

外の格子を手がけるのも建具職人さんのお仕事。
自由度の高かった家の中に比べ、外観は「景観保護」の観点から今井町の仕様が決められており、図面通りの設計になっているそうです。
格子は縦と横の組子が組み合わせって構成されるわけですが、単に縦の組子に穴を空け、横に串刺しするわけではありません。

そうすることで格子がしっかりと固定されるわけです。
自由にしていいといわれると、「少しでもいいものを」と職人として力が入りましたし、その意味でもいい仕上がりになったんじゃないかと自負しています。
塗装職人さんインタビュー
新築と古民家の現場での一番の違いは染料!?

福島さんも福西さん同様、30年以上のキャリアを誇る職人さんです。
塗装職人さんの場合、新築物件では外壁や屋根などの塗装が主な仕事となります。
今井町の古民家の現場では、各柱の塗装を主に担当されました。
木の呼吸を止めない自然塗料(柿渋)を使用

古い木材を保存する観点から、化学薬品が入った最近の塗料は使用することができず、自然の染料を使わないといけないそうです。
風雨にさらされる外観の一部には化学薬品が入っている塗料の使用も認められていますが、中は自然素材のもののみと定められています。
今井町の現場で使われている染料は柿渋です。
柿渋(かきしぶ)とは
柿渋とは、まだ青いうちに収穫した渋柿の未熟果を搾汁し発酵熟成させたもの。
日本では古くから、この柿渋を塗料や染料、あるいは万能民間薬として、マルチに活用してきました。
家屋や生活道具、衣料品の耐久性を高め、防水・防虫・防腐・消臭効果を与えるなど、その効能は驚くほど多彩。
近年は柿渋から抽出した「柿タンニン」も、健康・美容素材として注目を集めています。
出典:(株)トミヤマ公式サイト

ちなみに、自然素材からできているので飲んでも大丈夫なんですよ。
ちなみに、柿渋には、
- 防虫
- 防風
- 撥水
などの効果があります。

またヒノキだと油分が多く、木が塗料をあまり吸い込まないので回数が少なめでいいとか、対象となる木材によっても塗る回数が変わってきます。
古い木材の状態を見て、色を決めていく

天井に使われている丸太は、基本的には古い木材で、一部痛みの激しいものが新しい建材に取り換えられました。
新しい丸太が浮かないよう、色を付けていくわけですが、それだけだとコントラストが強くなるので、古い木材の上にも色を塗っていきます。
新しい木の場合、油分が多く、塗料を弾くので、特に何度も塗り重ねていきます。

古い建材から、当時の暮らしの一端がうかがい知れる面白さ

上の段落で、黒くなっている古い木の色合いを見て、塗料の濃淡を決めるとご紹介しました。
では、同じ「黒」でもなぜそのような色の濃い、薄いの違いが出てくるのでしょうか?


ちなみに、上の写真は先ほどの鴨居の続きですが、こちらは色が薄っすらと入っています。
玄関の方から見て右側の戸の開け閉めをよくされていたので、このような違いが出ていると推測されます。
虫食い箇所の塗装など、古民家ならではの難しさも

今回の今井町の物件の場合、すべての柱や建具に色は塗られていません。
例えば、天井の板はすべて新しい材料に改修されましたが、黒く着色はされていないんです。
それですべての木材に塗装を行っていません。
家づくりはもちろん、古民家の改修にもさまざまな専門分野の職人さんが作業に関わるわけですが、建具や塗装の職人さんが現場に入るは一番最後です。


当たり前といえば当たり前ですが、しずく一滴でも別のところに付けちゃうとアウトですからね。

ちなみに、塗装した木材はすべて3~4回は塗ります。
また、上でご紹介したように、色の濃淡によって塗りの回数を多くする場所もあり、全体の色のバランスがおかしくならないように気を配りながら、作業を進めます。
まとめ

今回の記事では、今井町の古民家プロジェクトの最後の工程を手がけてくださった建具職人の福西さんと、塗装職人の福島さんのお二人のインタビューをお届しました。
お話を伺ってみると、細かいところにさまざまなこだわりと職人技が活かされていることを知ることができ、興味深かったです。
今井町の建物の改修工事は一通り終了し、店舗運用に向け、今後さらに準備が進められていくようです。
楽しみですね!
また日生ハウジングでは、新築物件の建設にも、今回ご紹介した職人さんたちに協力をいただき、「よりよい家づくり」を推進しています。
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